おはようございます。毎週土曜日、リハビリ専門コラム(内部障害)担当の眞鍋です。
前回に引き続き、今回も人工呼吸器の記事となります。
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理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】人工呼吸器って怖いですか?その①(リハビリ)
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その② 人工呼吸器の歴史からモードや設定を理解する
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その③ 人工呼吸器の波形からリークを理解する
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その④ 最もよく使われているSIMVモードを理解する
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その⑤ アラームについて理解しよう
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その⑥ 人工呼吸(陽圧換気)の種類 IPPV,NPPV,NHFの違いについて説明できますか?
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その⑦ 5分でわかる人工呼吸器の用語 『PEEP』
理学療法・作業療法|【シリーズ人工呼吸器】その⑧ 5分でわかる人工呼吸器の用語 『VCV(従量式)』
今までモードや設定について
たくさんお話をしてきました。
まだお伝えしきれていない部分もありますが、
今度はグラフィックの見方について考えていきたいと思います。
グラフィックモニターを見て考えるためには
今までお話ししてきたモードや設定の知識を総動員しないといけません。
同時に、すぐに消えてしまうので
即座の判断が求められる高度な分野になってきますので、
ある程度の場数と慣れも必要なのが臨床です。
グラフィックがわかってくると、
いよいよ人工呼吸器が好きになってきますので
頑張っていきましょう!
グラフィックモニターには何が書いてあるの?
だいたいどの機種であっても、以下の3つが記載されています。
並びもおおよそこの並びで3段表示になっているものがほとんどだと思います。
① 圧波形
人工呼吸器は陽圧換気ですので、
必ず圧較差を利用して患者さんに空気を送ります。
ほぼ全員にPEEPがついてますので、
基線は0ではなくそこから圧をかけて
空気を送るので下のような波形になります。
VCVには2種類あります。
いずれにしても、VCVとPCVの違いは右肩上がりか水平かです。
PCVは設定した圧まで一気に上げます、
どれくらい一気に上げるかをライズタイムといいます。
グラフィックモニターで見分けなくてもいいのですが、
どちらの波形か分からないってことがないように
特徴は押さえておきましょう。
また、必ずPEEPがかかっているので
基線は0にはならないことも押さえておきましょう。
PCVであれば
PEEP+設定圧(吸気圧)=最高気道内圧
となります
② 流量波形
フロー、つまり流速です。
上がプラス、下がマイナスとなります。
プラスと言うのは患者さんの方に空気が流れているということ、
反対にマイナスとは人工呼吸器に空気が流れているということ。
つまり、上側にある時は吸気、
下側にある時は呼気ということになります。
VCVの矩形波では一定の流量を送るので
波形は水平となります。
人の呼吸もずっと一定の空気を吸うわけではないため、
案外同調しにくい設定です。
もっと吸いたいのに吸えない、
と感じてしまうと呼吸困難感につながります。
漸減波とPCVはだいたい同じような波形となります。
どちらも吸気の始めがトップになり
そこから右肩下がりになります。
③ 換気量波形
換気量波形はVCVもPCVもそんなに変わりありません。
右に上がっている時が吸気で(グラフィックの左半分)
右に下がっている時が呼気です(グラフィックの右半分)。
しっかり下まで下がっているかはリークの判断などで
使用したりしますのでチェックしておきましょう。
波形から読みとれることは?
基本的なグラフィックが理解できたところで、
代表的なグラフィックの異常とそこから読み取れる情報を整理しておきます。
応用的なところは別項にして、
ここでは基礎的な部分をしっかりおさえましょう。
大事なことは、波形と問題をリンクさせることではなく、
なぜその波形だとその問題を意味するのかを理解しておくことです。
ここがないと全く応用が効かないのであまり意味を成しません。
① 圧波形
CVの圧波形は原則一定です。
設定した圧で空気を送るので、
空気が送りにくい(圧が高い)状態になれば換気量が低下しますが、
圧波形は同じになります。
ただし、吸気時間が患者さんに合っていない場合は
圧の上昇を認めるのでチェックが必要です
(ただし、これはPCV特有ということではなく、PCV、VCV共通する事項です)
圧波形を注意して見ておかないといけないのはVCVの患者さんです。
VCVの患者さんで流量が足りなくて息苦しさを感じると
吸気中に患者さんの吸気努力を波形として読み取れます。
吸気の最後を見ていると、
先ほどの吸気時間が長いときとよく似ていますが
最後に尖っていることがあります。
これは一回換気量が多すぎるサインです。
パンパンな肺に詰め込もうとするから圧がパンっと跳ね上がるのです。
通常一回換気量は6~8ml/Kgでしたね?
ここの確認が必要です。
もう一つはこのグラフィック。
これは吸気時間が長すぎるため吸気の後半に
患者の呼気が入り気道内圧が上昇しているサインです。
つまり、吸気時間を短くすることを検討しなければいけません。
頻呼吸やCOPDの患者さんでよく見かける波形です。
② 流量波形
圧波形、換気量波形と違い、
プラスとマイナスがあるのがこの流量波形の特徴です。
つまり、吸気だけでなく、
呼気時の情報も入手しやすいのが流量波形。
ポイントは呼気が0(基線)に戻っているかどうかです。
このように、呼気が基線に戻っていないということは、
息を最後まで吐き切れていないのです。
つまり、吐き残しが存在するということであり、
これをAuto PEEPと呼びます。
Autoというのは『自動』という意味です、
自動的にPEEPが作られているからAuto PEEPと呼びます。
これは特にCOPDなどの閉塞性肺疾患で多く、
人工呼吸器でなくてもエラーとラッピング(空気捉えこみ現象)という言葉は利用されます。
肺胞に空気が貯まるため肺胞内圧が高くなります。
肺胞内圧が高くなるということは胸腔内圧も上がるため静脈灌流量が減少して血圧にも影響を及ぼしやすいことも知っておくといいでしょう。
もう一つ代表的なのがミストリガーです。
ミストリガ―とはそのままでトリガーをミスしてしまっているということ、
つまり患者さんが吸気努力をしたってことを人工呼吸器が感知できていないこと。
これはけっこう患者さんに負担となりますし、
患者さんの呼吸をよく見ていれば気づくことが可能です。
③ 換気量波形
これはおそらくグラフィックで一番有名なリークですね。
臨床での遭遇頻度も高いため必ず覚えておく必要があります。
患者さんに送った空気の量と患者さんの肺から出てくる空気の量は同じはずですよね。
つまり、換気量波形で言えば吸気量と呼気量は同じなので基線に戻るのが普通です。
しかし、リークがあると、要は患者さんに送った量と言うのは実際には
患者さんの肺に入った量+漏れた量
となります。
一方呼気では患者さんの肺に入った量しか出せません、こうなると吸気量に比べて呼気量が少ない、という波形が生まれます。
これがリーク波形です。
3. まとめ
今回はグラフィックの基礎についてお話をしました。
今までのモードや設定の話が理解できていればある程度わかる内容であると思います。
なかなか一度ではわからないものですので、繰り返し復習をして臨床で活用していきましょう。
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【著者プロフィール】
急性期病院勤務理学療法士。専門は内部障害系理学療法。
理学療法士が生涯学べる環境を作りたいと考えています。
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